【感想メモ】 谷川流「涼宮ハルヒの暴走」 角川書店(文庫/角川スニーカー文庫)

シリーズ第五弾。雑誌掲載の短篇2つに書き下ろし中篇を含めた作品集です。それぞれ夏・秋・冬と季節が関連しており、冬は前作「消失」を受けた話になっています。「涼宮ハルヒ」は第一作でハルヒの能力が明らかになってしまっているためシリーズものとしては逆に使いづらくなっている傾向が見られていましたが、この「暴走」に至っては作者が開き直ったのかそれとも結果としてこうなったのかは分からないものの、最早ヒロインは長門有希と言ってもいいような状況になっています。地味で無表情な眼鏡の文学少女しかしてその実体は…ということで第一作目から注目していたキャラなのですが、この本では既に眼鏡がないのでそういう意味では魅力三割減だというのはおいといて、やはりその能力と「無表情」という初期パラメータが微妙に「キョン向きな感情」にシフトしているように見える描写が私のラブコメ心をくすぐります。作品としては展開がやや強引な感じもうけますが、キャラクター小説としては悪くない出来だと思います。題名という看板背負ってるはずのヒロインの扱いが最早「事件の切欠」以上ではなあたりがいささか気になりますが、シリーズとしては何等かの収束をしていこうという意図が見られるような気がするので続きがでたらまた読もうかと思います。