表題作及び「ヘルタースケルター」を収録した中篇集。島田荘司といえば「御手洗」か「吉敷」です…少なくとも私はそう思ってます…が、この本に収録されているのはどちらでもありません。というか日本人出てきません。
表題作は「旧約聖書の謎を解く」と随分大風呂敷広げていて、そこから派生した陰謀論もふくめて「と学会」扱いになるのでは?と思ってしまいましたが中篇らしく上手くまとめた、という感じを受けました。「上手く」まとめすぎたせいか少々読後のインパクトが弱い気がしますけれど、文章が読みやすく、気楽に愉しむ事ができました。
「ヘルタースケルター」は推理物ではありますがやや変化球タイプ。設定年代とか科学的な根拠等は私の知識が乏しいので判断付きかねますが、話としては悪くないです。ただ、「エデン〜」もそうですが、途中から「なんとなくこうなるんじゃないかなあ」という予想から
大きく外れないので驚きが少ないというか、サスペンスものとして上手くまとまっているが故に、そこを踏み越えてはいないというべきか。
気楽に楽しめたので十分だとは思うのですが、島田荘司という作家であるからにはもう一捻り、「あっ」といわせる「奇想」を感じさせて欲しいな、と思いました。