先日の出張の帰りに読む本として綾辻行人の「十角館の殺人」を買い込み、その勢いで続刊も再読したのでメモなど。
作者のデビュー作にして「館シリーズ」第一作。粗い所も有りますが、試みとして面白いし、勢いがあって再読ながら楽しく読めました。古典的有名作家の名前で呼び合うサークルのメンバーとかいくらなんでも「有り得ない」と思いつつ、「装置」としては「館」よりも意味があるのは面白いと思いました。
第二作。「中村青司の設計した館」と言うのが意味を持ち始めますが、館自体も「十角館」程特異という感じもないし、道具立ても分かり易すぎてややパワーダウンという印象を受けました。最後の「画」とやらが島田荘司の某作品を思いださせるようなオチだったのは困惑しました。「幻視」は余り意味なかったなあ、と。
第三作。装丁と言うか構成が凝っていて「形」が楽しめます。異常な状況における異常な殺人という綾辻らしさ(と言うのかな?)が発揮されていますが、「恐怖感」や「焦燥感」がイマイチ感じられないので最後のオチの冴えがもうひとつでした。これは再読で内容を覚えていたせいかもしれません。
第四作。そして「館シリーズ」の異端、と言っても良い作品です。実は「十角館」とこれを読み直したくてシリーズ再読始めたようなものです。前述の通り「異端」ですから、雰囲気は違うし、島田潔あるいは鹿谷門実の存在が微妙だし、純然たる「館」を愉しむという意味では邪道ですが、「異常性」のある世界を愉しむには一番な作品だと思います。推理小説としてはフェアとアンフェアぎりぎりな所にあるとは思いますが、オチの意外性は面白い。初読の時は「なんだこりゃ!?アンフェアだっ!」と思ったものですが、再読すると予想外に楽しめました。
第五作。個人的には「館」が持つ「異常性」と言うか、その設計者、いや依頼者のダークサイドが発動した館という意味では一番の作品だと思っています。館を作った人物の「目的」は、端から見れば「異常」以外な何物でもありませんが、その思いにより起こる事件。犯人の動機とかより何より、「館の存在意義」が一番面白い作品でした。「時計」と「時」という概念に対する考え方も面白かったです。
第六作。「第二部」とか言われますが、とにかく六作目です。これはオチを覚えていたので、粗探しというわけでもないですが、「あやしい」箇所を探すつもりで読んでいました。オチのサプライズがないので気が抜けた炭酸飲料という感じはぬぐえませんが、「ああ、ここでそれらしいことを書いている」といった箇所を探して楽しめました。