西村京太郎「北帰行殺人事件」 光文社(文庫/光文社文庫)

十津川警部の部下、橋本刑事が突然辞職して帰郷した。寝台特急青函連絡船等で次々と起こる殺人事件。橋本の恋人の自殺の原因を知った十津川らは橋本を追うが…と言う話。被害者と橋本元刑事の関係が途中で明らかになるのでかつての身内同士での対決と言う雰囲気を作り出しているが実は…と言う展開。改めて読むと被害者も加害者も同情出来ないのは相変わらずだった。橋本の「刑事だから」と言うのは綺麗事、と言う感じはしたが、出版当時はまだそのあたりの倫理観が強かったのか、それとも後に別作品で登場させるための伏線だったのか。この作品も所謂「トラベル・ミステリー」ではあり、時刻表トリックもあるが、今回は「おまけ」。トリックよりも動機がメイン。いやメインは最果ての稚内までの道程かもしれない。