西村京太郎「東北新幹線殺人事件」 光文社(文庫/光文社文庫)

都内で殺害されたOLは帰省の為に東北新幹線を予約していた。その席で乗客が毒殺され、その犯人の自殺で事件は終わったかに見えたが…と言う話。
この本の新刊当時、東北新幹線は開業して間が無かったと思うが、そういう「目新しいもの」を舞台にするのは流行作家として当然と言う事なのだろう。実際100万部は超えていると言う事でその目論見は成功していると言える。舞台が前提となるので犯人の動機も同情するのは無理がある…とはいえそういう連中も存在しかねないのが今の世の中だが…し、そのターゲットもステレオタイプ、そして被害者も殺される為だけに出ている「記号」的要素が強くなっているように思った。トラベルミステリーといえば時刻表トリックを始めとする「犯罪の不可能性」が売りだったので、そういう部分が消えたのは少々寂しいものがある、と思う。