宮脇俊三「旅の終わりは個室寝台車」 河出書房新社(文庫/河出文庫)

作家の宮脇俊三が編集者と共に全国の鉄道を乗って回る連作エッセイ集である。基本的にいつもの旅と同じだが、今回は当時の編集者、藍氏が同行する形態となっている。藍氏は「車派」で所謂「鉄」では無かったのだが徐々に著者の影響を受けたと言うか潜在能力が開花したのか、宮脇俊三の思わぬ言動を取る様になっていく所がいつもと変わった雰囲気と面白さを出していると思う。表題にもなっている「個室寝台車」は最早絶滅危惧種であり、本書に掲載された列車も消えているものもある。そういった意味で「旅の終わり」と言うものをしみじみ感じ、仮想の追体験としての「鉄」の旅を体験できる作品である。