ジョン・ディクスン・カー(三角和代 訳)「曲がった蝶番(The Crooked Hinge)」 東京創元社(文庫/創元推理文庫)

1年前アメリカから帰国し、爵位と領地を継いだ準男爵は偽物である。かのタイタニック号の事故に入れ替わった、我こそが本物であると主張する男が現れた。その決定的証拠があかされようとした矢先、不可解な殺人事件が発生し…と言う話。いわゆるフェル博士もので初読。故に素直な気持ちで読んだ訳だが、カー、あるいはディクスン得意の怪奇趣味は割合の抑え気味で、寧ろタイタニックのような言わば時事ネタの印象が強い。事件についてもトリックもさることながら、どいつもこいつも怪しい中で犯人が誰か、そもそもの動機が何かが興味深かった。フィクションに騙されるのは面白いな。