コンビニ売りのワイド版

出張ともなれば移動中や待ち時間に備えて文庫や携帯型ゲーム機を用意する。 近頃は年を取って文字を追う速度も低くなり、移動中はほぼ寝てる事もあり、以前に比べれば荷物は少なくなった。それでも普通よりは多いらしく奇異な目で見られるが気に無しない事にしている。
準備は万全でも行く先で本屋があればそれに寄るのが我が本能に近いのだが、諸般の事情でそれも果たせぬ事がしばしばある。世知辛い時代だ、との思いはさておき、本屋には寄れなくともコンビニには行く場合が多いが、そこでは雑誌以上に「コンビニ売り」の単行本が気になる。
主流はB6サイズでカバーもなく、紙質も週刊誌のレベルの「廉価版」である。しかしページの割りに値段もそこそこ…正直な所もう少し安いとなお良いが…なので、酔った勢いで手に取りそのまま購入と言う事も多い。実際、今日も「シャカリキ!」を買ってしまった。
コンビニ売り、という性質上、そもそもそういう層を狙っているのだろう。普通は単行本を集めはしてなかったが懐かしさに引かれて、という人や、少し前の話題作で映像化されたので読みたくなった、という人も予想されるべき購入層なのかもしれない。勿論私もその例外ではないが、普通の書店ではあまり取り扱わないこの手のものには元々の単行本には無かった特集ページや記事、インタビュー等が追加されている場合もあり、それを目当てにして、単行本や愛蔵版があるのにオタク気質に任せて全巻集めた作品もある。そういう意味では出版社・コンビニからすると「良い鴨」なのかもしれない。
低コストで色々な層にアピール出来るコンビニ売りの単行本は、出版不況が既に常態化しつつあるような気がする昨今は出版社からすると役立つ武器なのであろう。それを否定する気は全く無いのだが、一方では雑誌が出ては消え、と言う状態もあり、新しいものに触れる機会は減っているのが気がかりである。安全性の高い作品で一息つくのも良いけれど、出版業界には弛まぬ努力と前進を続けて、日本独自ともいえる進化を遂げた漫画の灯火を絶やさずに居て欲しい、とコンビニ売り単行本を抱えつつ「鴨」は思うのであった。