大村友貴美「首挽村の殺人」 角川書店(文庫/角川文庫)

医師、滝本志門が岩手県の寒村に着任して以後、村では謎の変死事件が続く。村が「首挽村」という不吉な名前で呼ばれる理由と共に浮かび上がる真相とは…と言う話。
第27回横溝正史ミステリ大賞受賞作であり、「これが二十一世紀の横溝正史だ」と言うアオリも気になっていたのだが、ネット書評がいまいちなので様子見していたら文庫になったので読んで見た。
地方の寒村で他所者が来たら連続殺人、と言う道具立てでは「横溝っぽい」と言えると思う。それに加えて、過疎化や無医村等、現代の社会派的な視点も見て取れる。そう言う意味では「二十一世紀の横溝正史」と言う方向性はあるのかもしれない。
しかし、結局の所は「何か物足りない」ものになっていると思った。
一番気になったのは「描写」で、文章が淡々としているのはまあ良いとして、登場人物・事件現場・村の配置等、事件や状況の把握に必要な部分の描写が不足しており、全体に「分かり難」くなってしまっている。結果として恐怖も興奮も盛り上がりも無いまま話が進むのが難点だろう。
意欲は買えないでもないが勿体ない、と言う気がした作品だった。