千葉暁「聖刻1092 聖都(壱)」 朝日ソノラマ(新書/ソノラマノベルズ)

ソノラマ文庫から発行されている(た?)「聖刻1092」シリーズの「聖都編」を二冊づつ合本にして、加筆修正した第一巻。第一巻は「旋風の狩猟機」と「熱砂の貴公子」の合本です。
正直な所、ここ最近の作者の聖刻シリーズに対するスタンスというか描き方はどうもバランスが崩れていて、ヘンに戦記ものとしたい所にキャラクターの暴走が始まっていたりするので、「加筆修正」の部分がかなり不安でした。幸いにも大きな改変もなく、ストーリーラインは保たれています。ただ、文庫版の方と比べると良い意味でのハッタリが薄まり、整合性をとった故に大人し目になった感じはあります。キャラクターが窮屈そうといいますか。昔、作者のキャリアの浅かった頃の「荒削り」な雰囲気が、世界によくマッチしており、多少の設定矛盾もそう気にならなかったので、ラドウがパラシュ・バラーハを初めて見た、といったような大きな間違いは訂正するにしても、基本的に二冊をまとめる方が良かったのではないかと思います。そもそも「旋風の狩猟機」や「熱砂の貴公子」といった文庫版タイトルが抹消されているのの寂しい。良くも悪くも作品への興味を惹起する「サブタイトル」なのですから、どこかに採用して欲しかった。
カバーや挿絵が変わった事については特に気にしていませんが、「聖刻」シリーズの肝の一つは「操兵」ですから「操兵名鑑」は掲載してほしかった。版権とか色々あるのかもしれませんが「完全版」を名乗るなら、内容の整合性とか以前に、操兵の系譜や図版を揃えてくれる方が個人的にはうれしいです。こちらは「完全版」が(恐らく)全三巻である事から、最後にまとめてドンと収録してほしいところです。それに期待して続巻も多分読むと思います。