D.エディングス「マロリオン物語2 砂漠の狂王」 早川書房(文庫/ハヤカワ文庫FT)

マロリオン物語」の第二巻。さらわれた息子のゲランを探すベルガリオン一行。エランドがエリオンドとなり、神々や例の「内なる声」などが現れては道を示し、予言に向けて準備が整っていきます。新登場のキャラクターも個性が出ていて、軽妙な会話が楽しめます。
ただ敢えて粗を探せば、「息子をさらわれた」事で落ち込んでいるのがセ・ネドラだけで、ガリオンはたまにカッとなる事はあっても、他の時はなんだか普通、というか、予言や情報でゲランが「今は無事」とは言われても、ベルガラスやポルガラ等の面々もややのんきというか、緊迫感が感じられないのは私だけか。前述のように「軽妙な会話」がこの作品の魅力ではありますが、前作「ベルガリアード」に比べても危機感が無いというのが、やや違和感があります。ヘンに暗くなって陰々滅々とした話になっても困りますが、子供の誘拐が単なる「旅の動機」にしかなっていないようなのが気がかりです。
違和感といえば「ベルガリアード」では邪神に使える民という印象のなかったマーゴ人にもいろいろあって、それはいいのですが、この分だと「世界に本当の悪人はそうそう居なくて、話せば平和になるんだよ」というオチになるのではないか、とちょっと驚くような展開も。あと、露骨とも言えるほど「ハッピーエンド」に向けて(ほとんど)全てのキャラのカップリングが進んでいるのもなあ。悲劇で終わるのも何ですが、まあそう深く考えずに素直にストーリーを愉しむのが吉のようです。
色々否定的な事も書いていますが、決して読むのを止めようとかは思ってませんし、今後の展開も楽しみにしていますので、念のため。