【感想メモ】 黒岩涙香(伊藤秀雄 編)「明治探偵小説集1 黒岩涙香集」 筑摩書房(文庫/ちくま文庫/ISBN4-480-42081-9)

黒岩涙香といえば萬朝報の人で「岩窟王」の翻訳というイメージが強いのですが、実際には西洋の「探偵小説」の翻案を手がけているようです。この本に収録されている「幽霊塔」と「生命保険」はいずれも外国作品の翻案で、前者については江戸川乱歩がさらに翻案したという同名作品もあります。乱歩の作品の方は以前読んでいまして、その元となった作品にも興味を引かれたので今回非常に楽しみに読んでみました。
実際のところ、筋立ては基本的に同じですから驚きはありません。明治時代的な口語文学というのが今の時代ではさすがに古めかしく感じますが、この作品に関しては「時代的な雰囲気」というのを増幅させる良いスパイスとなっているような気がします。名前は日本人名にしているのに舞台が「英国」だったりするあたりに違和感を感じないでもないですが、そういう違和感に慣れさえすればなかなか愉しめました。
作品もさることながら、明治時代の人もこのような「探偵小説」を愉しんでいたというのは驚きです。こういう作品に需要は割りと昔からあったということですね。