【感想メモ】 カーター・ディクスン「騎士の盃」 早川書房(文庫/ハヤカワ・ミステリ文庫/ISBN4-15-070410-4)

John Dickson Carr "THE CAVALIER'S CUP"
歴史的な謂れの有る子爵の館にある騎士の盃。鍵の掛かった部屋にあるはずのそれを何者かが動かしたという。館に赴いたにマスターズ警部は何者かに殴られた。最初は渋っていたヘンリ・メリヴェール卿はその謎の調査に乗り出すが…
カーといえば密室と怪奇趣味ですが、このHM最後の長編となった作品では前者は前面にでているものの、後者は「歴史的事件」や「古風な館」といった道具立てがあるわりにその印象が薄い。凄惨な描写もなく、やたらと歌の練習に拘るHMの姿に一体どうなる事かと危惧を抱きつつ、淡々と進む話を読み進めたら…なんとも微笑ましいというか。ユーモラスというかほとんどギャグになっている作品です。気楽に読めて割りと楽しめましたが、もう一味欲しかったような気がします。