R.A.ハインライン(福島正実 訳)「人形つかい」 早川書房(文庫/ハヤカワ文庫SF)

R.A.Heinlen "THE PAPPET MASTER"
寄生・侵略ものでは名高い作品です。あれ?こんな話だっけ?と思うあたり、読んだ事がなかったようです。
1951年の作品で舞台は2007年。発表当時としては「近未来」でも2005年の今だと「極近未来」ということで、その中の情報伝達という面では予想と実際に大きな差があります。今ならネットに速攻であがりますからこの手の事件はさらに複雑怪奇な様相を呈すると思われますが、本作ではTV局を押さえればOKというのが単純すぎる、というのが少々気になりますし、「寄生されているか否か」の見分け方があまりにもすご過ぎるというのも気になります。前者については半世紀前の作品という前提を置いておけばそこまで問題ではないですし、後者はある種のユーモアだと取れなくもない。実はラストでいかにもアメリカ的というかハインライン的なノリになるあたりが一番気になったのですが、逆にこれは狙ってやったのかと思えばそれはそれで興味深い。
ヒロインがもう少しクールだとなお良いと思いますが、50年前のツンデレとみればこれはこれで。
ホラーとしては少々弱いですが侵略物の古典としてはなかなか面白かったと思います。
あと、寄生生物に日本がやられてない理由というのが「日本人は平気で着衣を脱ぐ」というのを読んで、一体ハインラインは日本人をどういう目で見ていたのか疑問に思いました。まあそういう人がいないではないですけれど。