谷川流「涼宮ハルヒの憤慨」 角川書店(文庫/角川スニーカー文庫)

新たなる敵(?)の生徒会長によりそれぞれが小説を書く事になる「編集長★一直線!」と同級生から持ち込まれた幽霊騒動「ワンダリング・シャドウ」の二つの中篇を収録。前者はそれぞれの書く「小説」が中々ヘンな味が出てて面白い。特に長門の「私小説」は命名由来のようなものも明らかになるし。後者は幽霊の正体見たり、と言う事で猫最強、という事でしょうか。やや予定調和的な道具立てながら個性が出ている前者に比べて、イレギュラーな事件な後者という対比は一冊の本としては面白い。ただ、ヒロインのハルヒが徐々に「普通」になっているようで、自然影が薄くなるのは作者の狙いか否か。それっぽい描写もあるにはあるので後続作品への何かの伏線かもしれませんが、ここ数冊すっかり長門あたりのほうが印象深い。そろそろ「涼宮ハルヒの」という看板に偽りが、という感じがします。