西村京太郎「寝台特急殺人事件」 光文社(文庫/光文社文庫)

二時間ドラマでも定番の西村京太郎のトラベルミステリー。これはその最初期の作品。「ミリオンセラーシリーズ」と銘打って新装版が出たので再読してみた。
内容は特に変更された所は無い。作品としては30年程前なので世情も変ってしまい今の常識では違和感のある部分…大臣のブルートレインでの「御国入り」とか…も多い。推理ものとしてはやや強引と言うか力技が過ぎるだろうと言う部分もあり、その割に動機がやや弱いような気がするけれど、時刻表や国鉄(当時)の運用を含めたトリックは意外性があったと思う。また「トラベルミステリー」を人口に膾炙せしめたと言う意味での記念碑的な意味合いは大きい。
文章はテンポよく、謎や旅情を織り交ぜる事で気軽に読めるものになっている。改行や会話が多く、昨今の「新本格」の流れを汲む諸作品と比べれば、ライトノベルのように読みやすかったりもするが、これも大いに売れた原因の一つかもしれない。
なんだかんだ言いつつ、久しぶりに読んだら面白かった。光文社では何カ月か続けて昔の作品の新装版を出すようなので、折あれば他のも読んでみたいと思う。