藤木俊「こわしや我聞」9巻 小学館(新書/少年サンデーコミックス)

最終巻。父の行方を告げて消息を絶った辻原。動揺する我聞とそれを支える國生、という発端から最終決戦+後日談が収録されています。
作者自身でも「終盤のほうは(中略)話がつまって」とあとがきしているように、少々バタバタしておりますが、ライバルとのバトル、そしてラスボスとの戦闘、という少年漫画の正統的な流れは守っています。連載時から思っていましたが、やはりあと1巻あればもう少し「溜め」が出来てなお良かったか、と少し残念な気がします。「おまけ」と「後日談」で続編というものはまず無いという事が明らかですから、これもまた寂しい感じがしますが、「こわしや我聞」という作品が「親父たちが帰ってくるまでの話」とするなら、その後の方向性は暗示されていますから、あとは作者や読者、それぞれの心で補完すれば十分ともいえます。
惜しむらくは親父コンビが予想外に面白くて、これで出番がないということでしょうか。「後日談」がダメでも「前日談」あたりは無理かな?
ともあれ、少し地味な感じで始まって、奇を衒ったところが無い堅実に真っ当な少年漫画として十分面白かったと思います。作者の人の次回作に期待します。