笹本裕一「ARIEL番外編2 家出艦長の里帰り」 朝日ソノラマ(文庫/ソノラマ文庫)

ARIEL番外編第二巻にして「本当のおわり」。
基本的にアバルト・ハウザー艦長とシモーヌ・トレファン経理部長の 「決着」となる話です。第六巻で「卒業」めいた事をやってから放置されていた「決着」ですが、本編最終回の時点で「放置」状態でしたから、これで収まる所に収まったということでしょう。しかし、結婚したことないし、する見込みもないのですが、 男とは結婚を前にするとああもおたおたするのでしょうか?
まあらぶらぶな雰囲気と、家族たちの暖かい感じがよかったです。なんだかんだ行っても両親は子供達を愛し、子供達は親を愛し、一族は仲良し。現実世界が実際にそうかとは一概に言いづらいですが、それでも小説読んでイヤな気分になっても仕方ないので、これはこれで良いと思います。
で、結局「お母さん最強」ということですか。これまでに伏線は引かれていましたので、まあそうなんでしょうけど、ハウザー家の男どもにも もう少しスポットライトというか美点を示して 女傑が惚れる理由をもう少し明示して欲しかったかな、と思いました。ハウザー家当主とその息子の「タレ目の鷹」は指揮官としてすごい、というのは言われていますが、本編後半以降はどうも情けない部分ばかりが目立っていましたので。
ともあれ、本当にこれで「最後」ということでハウザー一族の「武勇伝」とかSCABEI首脳部の「武勇伝」とかいろいろネタはありそうだし、そもそもずーっと長い間付き合ってきたシリーズが終わりだと思うと寂しい限りですが、必要な「締め」は完了したと言う事で気持ちよくフィナーレを愉しむのがファンとしては正道でしょうか。シリーズ全体を通してやや否定的に思うところはいくつかありますが、全体としては大好きなシリーズの一つで、随分愉しませてもらったのを作者やスタッフに感謝したいと思います。