ここ最近読んだもの〜いろいろ

晴耕雨読を気取って本を読む。

西村京太郎「東京駅殺人事件」 光文社(文庫/光文社文庫)

東京駅長の元に駅爆破の予告が届く。時を同じくして寝台特急から発見される死体。警視庁の十津川警部はその捜査に乗り出すが…と言う話。「駅シリーズ」の第一弾で、推理小説と言うよりサスペンス小説である。いわゆる「トラベルミステリー」ではないので「旅情」や「観光」と言う面では一歩譲るが、発刊当時では目新しく感じたと記憶している。せっかく「駅」が主役なのだからもう少しマニアックな面を見せて欲しい所だが、時間との競争というかサスペンス色が強くてそこまでの趣味性はない。逆に言えば深みにはまらないようになっているので待ち時間や電車に乗りながら読む小説としてはすぐれているとも言える。犯人は相変わらず動機が微妙だが、ある意味共犯者の行動原理が現代的であり、そこは再読しても目を引いた作品である。

米澤穂信インシテミル」 文藝春秋(文庫/文春文庫)

破格の時給に惹かれて集まった十二人の男女。様々な思惑で集まった彼らはある実験に参加する事になる。それはとある施設で7日の間、24時間観察をされる事であり、殺人と犯人当ての教唆であった…と言う話。
米澤穂信という作者は「さよなら妖精」や古典部シリーズ等、学園物と言うか日常系ミステリの作家というイメージが強いが、昨今では「犬はどこだ」と言う一風変わった作品をものしている。この作品も「一風変わった」部類で、所謂クローズドサークルと言う古典的な環境を作り出す手段が割と現代的で面白い。ミステリというかサスペンス的な色合いが強く、登場人物の「動機」や背景がわざとそうしているのかもしれないがあやふやなのが些か座りが悪いけれど、閉鎖された空間でのギスギスした感じが出ていたり、推理も中々考えられている。そもそも施設の存在自体が浮世離れしているので推理ものとしてフェアか、と悩む部分もあるが、それも小説の味として受け入れられれば十分に楽しめる作品だと思う。

甘詰留太「ネガティブ・ハッピー・マリッジ」1巻 少年画報社(B6/YKコミックス)

30歳になった啓太郎。真面目だが恋に臆病な彼は独身寮での生活にそれなりに満足していた。ある日部長の紹介で見合いをするが、相手の秋緒に恋をして…と言う話。
臆病な男と綺麗だが訳ありの女、というある意味で「ありがち」な設定だが、独身寮の面々や同期の男とか、ステレオタイプながら非現実的ではない存在のおかげで、私のようにもてない中年にはものすごく共感しやすい作りになっている。というか、私と年齢こそ違うが、主人公の「女性に期待して裏切られるのも期待されて裏切るのも怖い」と言うセリフがグサグサくる。 1巻段階ではそれなりに簡単に相思相愛になったようにみえて実はお相手には…と言う展開のようだが、山越え谷越え何らかの形で「ハッピー」なオチになるようにみえる。前述のように私のような人にはニヤニヤ笑って読む余裕はないが、先の展開が気になる作品である。