読んだ本とか

ゆっくりと本を読んだ。

泡坂妻夫「妖女のねむり」 東京創元社(文庫/創元推理文庫)

樋口一葉の遺稿と思われる一枚の反故を偶然手に入れた真一は旅先で出会った女性、麻芸に二人は前世で恋人同士だったと告げられ…という話。
「だまし」に定評のある作者であるが、生まれ変わりとか前世とか推理小説とは思えない道具立てが散りばめられ、恰もそれが真実であるようにみせかけ、最後に全てが合わさって事実が明らかになる展開は「上手い」。ありえないはずのものがあり、幻と現が交錯する。随分前の作品だが文章といい展開といい、今でも十分通用するというかそれ以上であり、気持ちよく騙されたい人には激しくお奨めできる作品である。

西村京太郎「上野駅殺人事件」 光文社(文庫/光文社文庫)

上野駅のホームレスが毒殺された。これを発端として次々に起こる殺人事件。十津川警部は事件に上野駅が絡んでいるとにらみ捜査を開始する…と言う話。
駅シリーズの第2弾。著者の西村氏は上野駅に思い入れがあるのか時々作品で言及されるが今回は上野駅が主役。相変わらず犯人の動機が無茶だが、今や犯人と同世代となり、今の世相を考えるとこういうのもいるかなあ、と思わせるあたりが長い事一線で作家やってる人の力量と言う事なのだろうか。それにしても上野駅はこの作品の時代と随分様変わりしている事を思うと、ノスタルジックな気分になれるような気が作品ではないかと思う。