「機動戦士ZガンダムIII-星の鼓動は愛-」 松竹(映画)

「新訳」と銘打った「劇場版Z」の最終作です。基本的にTVシリーズの流れに沿っていますが、前作「ZGII」で強化人間達がばったばったと退場しているので、キリマンジャロダカールの地上編はばっさりカットされており、戦場は宇宙、それもゼダンの門宙域の戦闘に限定されています。クワトロ・バジーナ大尉ことシャア・アズナブルの最大の見せ場、「ダカールの日」が無いのは初代ガンダムから見続けていて、 ZGでは精彩を欠いていた「赤い彗星」のステージが無くなったのはちょっと悲しい所ですが、その代償としてストーリーラインがはっきりしていて…とは言えストーリー自体はやはりTV知らないと理解不能でしょう…、映画としてはまとまっています。少なくとも編集編集で総集編というより名場面集となってしまっていた「ZGII」よりは面白い。二時間に満たない作品では一つの戦場でのやりとりに焦点を当てたのは正解だと思います。
作画は例によってオリジナルと新作画の差は気にはなりますが、新作画で動くMSの動きが美しい…コロニーレーザー攻防戦での百式、THE-Oそしてキュベレイの三つ巴は見ごたえがありました。出来ればカットインするキャラクター画も新作画になっていればなお良かったのですが。
「誰も知らない」ということでTVとは違うラストという話題のこの作品ですが、「ZZ」という後続が必要でなく、また20年の時が過ぎて人間が丸くなったのか、ああいうラストも有りでしょう。 TVの時のようなサプライズが無いので結構あっさりしている気はしますが。とはいえ何しろ「皆殺しの富野」ですがバタバタと人は死にます。ほとんど意味もない、というほどに。その中でカミーユの得た物があれならあれはあれで。ただ割りを食った連中も多いわけで、特にジェリドに至っては最後の最後にあの台詞を言う事も出来ずに撃墜されて、劇場版全3作で一番割りを食った男となってしまいました。報われませんね。対して妙に印象が強いのがヤザンで、TVでもやり放題でしたが劇場版でもやり放題。大塚芳忠の演技が良いです。ハマーン様は全編に渡って印象が強いので特に言及はしませんが、悪い意味ではありませんけどTVの時とは微妙に印象が違う。これが「新訳」の成果というか、この作品にはこのほうがいいかも。
いくつか気になる所はありまして、特にラストバトルの所で次々出てくる「背後霊」の方々のうち、フォウはともかくロザミアはカミーユとの絡みをほぼカットされていたせいで違和感ありまくり。このあたりは新作がで訂正しておくべきだったかな、と。あと、サラの声優さんが違う人になっていたり…「ZGII」の時より違和感なし…、セイラさんが「ライブラリー出演」だったり、気になったりしました。前者はともかく後者は別人がやるとまた異論反論が出るだろうし、あの台詞だけなら「ライブラリー出演」で正解でしょう。
話によると、一応この後「逆襲のシャア」には続くようですから、その間のミッシングリンクが気になるところですが、なんだかんだで全3作愉しませてもらいました。もう一度TVシリーズを見直したくはなりましたが…DVD買うかなあ。高くてなかなか手がでませんが。