C.A.スミス(大瀧啓裕 訳)「ゾティーク幻妖怪異譚」 東京創元社(文庫/創元推理文庫)

地球最後の大陸ゾティークを舞台にした短編集。 (多分)超未来の事ではあろうが、そこには機械文明や科学技術といった野暮なものは一切ない。魔法と錬金術、神々や妖異が跋扈する幻想の世界。実際の所、殊更恐怖を煽るような作品はあまりなく、幻想世界の冒険譚が主となっており、とても読みやすかった。ラヴクラフト的な恐怖譚を求める向きには不足はあろうが、怪異な世界のファンタジーとして普通に読みやすい作品ばかりである。ゾティークが「地球最後の大陸」と言う前提があり、太陽が赤色になるほど未来の世界がこうなるのか、と想像しながら読むと、更に雰囲気が盛り上がって面白さが増すような気がする。