連城三紀彦「戻り川心中」 光文社(文庫/光文社文庫)

表題作を含む五編からなる作品集。「花葬」というシリーズなのだそうですが、不勉強で知りませんでした。連作とはいえ時代も場所も人物も関係はなく、大正から昭和にかけての時代風物に合わせて流麗な文章で描かれた世界は時々これらがミステリである事を忘れそうになる程です。とはいえ、謎は散りばめられ最後には回収され、しっかりとした推理ものとなっているのもまた事実です。表題作は巧妙ですし、「桐の柩」 と「白蓮の寺」はその動機に驚き、「藤の香」「桔梗の宿」はそれぞれの味わいがあり面白い。「花葬」にはまだいくつか作品があるらしいので機会があれば読んでみたい、と思いました。